教育心理学研究
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日本の大学生の強迫的な行動を引き起こす不完全感における内受容感覚の敏感性の役割
指方 賢太小澤 永治
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2024 年 72 巻 3 号 p. 169-182

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抄録

 内受容感覚に焦点を当てた研究は強迫症の理解や支援に有効であるとされている。近年強迫的な行動を引き起こす動機として危害回避と不完全感の2つが提唱されている。中でも不完全感は治療効果を低減させることから近年の研究で注目を集めている。複数の研究において不完全感に影響を与える要因として内受容感覚の認識の困難さが指摘されている。本研究では内受容感覚の敏感性が不完全感と危害回避を予測すると仮説を立てた。研究参加者は日本人大学生202名(Mean age=21.13, SD=1.82)であった。階層的重回帰分析を行った結果「Emotional Awareness」が危害回避を予測し「Trusting」が不完全感を予測していた。これらの結果から危害回避と不完全感にはそれぞれ異なる内受容感覚の敏感性が関連していることが示された。そのため強迫的な行動の動機の違い(危害回避と不完全感)によって強迫的な行動に対する有効な治療法が異なる可能性が示唆された。今後の研究では縦断研究を行い因果関係について明らかにする必要がある。

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© 2024 日本教育心理学会
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