教育心理学研究
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原著
比例推論スキルを向上させる幼児の関係探索活動の効果の検討
古本 果花佐治 伸郎今井 むつみ
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2025 年 73 巻 4 号 p. 232-247

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抄録

 児童期における分数の理解は将来の学業や仕事の成果の予測要因となることが知られているが,分数の概念的な理解は児童にとって大きな困難を示す。これまでの研究では児童の分数理解を助けるために,生活の中で半分や2倍等の乗法関係に着目する関係探索の活動の効果が検討されてきた。しかし,このような効果が就学前の幼児への活動にもみられるのかについては検討されていない。特に幼児は分数の知識の基盤となる比例推論を行うことが知られており,関係探索の活動がこの比例推論に効果を持つかを検討することは有効であると考えられる。そこで本研究では,幼児が遊びを通して半分や2倍の概念に触れる関係探索の活動を3つ作成し,これらの活動が比例推論にどのような効果を持つかを検討した。5, 6歳の幼児が事前・事後課題として比例推論課題を実施し,介入群は関係探索の活動,統制群は乗法関係の習得が期待されない活動を実施した。その結果,活動終了から約1週間後の事後課題において,介入群の比例推論の成績が有意に向上した。この結果は幼児の関係探索の活動は,比例推論の達成に有効であることを示した。効果が見られた要因として,乗法関係に関する知識・語彙・日常における注意傾向の向上や,Playful Learning理論に基づいた活動設計,量的関係への自発的注意の高まり等が議論された。

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© 2025 日本教育心理学会
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