教育心理学研究
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社会的成熟度の発達と形成要因に関する研究
松原 達哉
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1964 年 12 巻 3 号 p. 152-165,190

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抄録

4才から8才までの子どもの社会的成熟度の発達を調査研究することと, 社会生活能力の形式に影響を与える要因について若干の考察をすることを目的とした。社会的成熟度の内容は, 作業能力, 運動 (移動) 能力, 意志交換能力, 集団への参加能力, 自発性 (自主性), 自己統制, 基本的習慣 (清潔・排泄・着衣・睡眠・食事) の7 領域, 180項目である。
対象は, 全国の11幼稚園, 8保育所, 15小学校の3000 人の子どもの母親または保護者に, 上記の質問紙を配布し, 調査研究した。そして, 各問題別の通過率と各領域の発達傾向を調べた。結果は, つぎのようである。
(1) 都市の子どもの社会生活能力は農村の子どもよりすぐれている。
(2) 性差については, その差は認められない。
(3) 社会生活能力は, 年令とともに発達するが, “自発性”“自己統制”“基本的習慣”などの発達速度は緩慢である。“基本酌習慣”は, ほぼ5才までに完成する。
(4) 双生児, 未熟児などの社会成熟度指数 (SQ) は, 普通児より低い (1%の水準で有意). 肺炎, 消化不良など大病を患った子どものSQもやや低い傾向がある。
(5) 社会生活能力の発達には, 兄弟数も関係があり, ひとり子, 特に両親とひとり子だけの家族数の少ない家庭の子はSQが低い。一なお, 社会生活能力の発達は, 子どもの成熟と学習とが影響する。それゆえ, 将来の研究としては, こうした能力を十分発達させるには, 子どもの成熟に最も適した時期に, 最も適した方法で学習させることが大切である。

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