教育心理学研究
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高校生からみた大学の専門分野の構造
柳井 晴夫
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1965 年 13 巻 3 号 p. 166-174,192

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抄録

(1) 高校2, 3年生の20の専門分野に対する志望興味の程度の評定点にもとついて因子分析を行ない, この結果から16の専門分野を理科群, 文科群に分類した。これらの (専門分野に対する評定点を学年別に因子分析し, 理科文科志望得点からS得点を定義した。
(2) 高校2, 3年生の大学専門分野に対する興味にもとづく選択基準は科学技術に対する興味と言語文学的興味すなわち, いわゆる理科的興味と文科的興味によつて説明される。この興味の分化は高校1年の時期にほぼ成立しているが, まだ固定していない。高2, 3年の間に急激に分化する。
(3) しかし, 個々の専門分野に対する興味の分化はあまり進んでいない。したがつて, 興味の点からみると, 入学時に特定の専門分野を選択させることは無理がある。
(4) 因子分析の結果得られた第3因子は, 理論系と実用系の基準にあたるが, 理論系の専門分野とみられる数学物理などは1年生では他の理科系の分野と変らないが, 2, 3年生では, 文科因子が減少する。それは, これらの分野の志望者が理論への興味とともに, 能力をもつ者だけに限定されてくるからであると考えられる。
その反面, 工学部系の専門分野に文科因子が増加するが, これは, 実用的興味という点で法律・経済などの専門分野に共通する面をもつためであろう。
(5) S得点から判断すると, 高学年になるに従つて, 理科系専門分野に対する興味は減じ, 文科系専門分野に対する興味が増大する。また理科系志望は早期にき.まる傾向がみられる。

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© 日本教育心理学会
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