教育心理学研究
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文章の再生における協同, 競争事態と集団成員の特性との交互作用
北野 栄正
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1972 年 20 巻 4 号 p. 226-235

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抄録

1, 集団成員の特性を変数として, 協同と競争の社会的事態による集団記憶への関係を問題とした。
2, 被験者として中学校生徒24名を, 集団成員4名ずつの, 内向性グループ, 外向性グループ, 異質グループ, に分け, それぞれのグループを2組ずつ選んだ。そして, 内向性グループ, 外向性グループ, 異質グループ, それぞれ, の1組を協同事態に, それぞれの他の1 組を競争事態に分けた。各グループに刺激材料を記銘せしめ, 20分, 1日, 3日後の話し合い後に再生せしめた。
3, 協同事態の再生率は競争事態の再生率よりも, 各再生時間において, 高くなっている。
4, 同質の集団成員 (内向性グループ・外向性グループ) は協同事態において, 異質の集団成員 (異質グループ) は競争事態において, それぞれ再生率が高く, 同質の集団成員の競争事態と, 異質の集団成員の協同事態では, それぞれ再生率が低くなっていて, 社会的事態の機能と集団成員の特性が集団記憶に大きな作用を及ぼしている。
5, 内向性の集団成員は, 協同事態では再生率が高く, 競争事態では再生率が低い。この傾向は, 外向性の集団成員についていえる。異質の集団成員は競争事態において再生率は高く, 協同事態で再生率は低く, 社会的事態の機能と集団成員の特性が, 集団記憶に大きな作用を及ぼしていることが, ここでも理解される。
6, 集団記憶においては, 集団成員の特性, 成員相互の交渉を配慮して, 十分なる効果を期待しうるものと思われる。

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