教育心理学研究
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性役割認知の発達
東俊 子田中 久子土屋 和子
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1973 年 21 巻 1 号 p. 48-53

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抄録

性役割を認知の発達という視点から4次元 (A―外面的事実, B―個人的行動, C―社会的行動, D―内面的特性) に分け, その発達的展開に関して, 次の2点を明らかにすることを目的として調査を行なつた。
1. 子どもの性役割認知の次元は, 発達にともなって増加するであろうか。
2. その次元は, より外面的・具体的なものから, より内面的・抽象的なものへ広がるであろうか。(すなわちA→B→C→Dの順に性役割として認知されるであろうか) またこれに付随して, 性役割認知における性差および認知対象の相違 (大人の性役割と同輩の性役割) による認知の相違を予想し, これらの点についても考察を行なうことにした。
小学2, 4, 6年生・中学1, 3年生を対象とし, 質問紙法による調査を行ない, 分散分析, 因子分析による検討の結果, 次の点が明らかとなった。
1) 正答率は学年の上昇にともない増加し, 性役割認知は成人のパターンに近づいていく。
2) 予想した次元に多少の改良を加えた新しいABCD 4次元を構成した結果, 発達に伴ない性役割認知の手がかりとなる次元数の増大がみられた。
3) 性役割として認知さされる順はA→B→D→Cであり, DとCの順が予想とは逆であった。しかし外面的から内面的へという発達の方向は否定されたとはいえず, 両者の順についてはいくつかの可能性が考えられた。
4) 次元の発達的順序については, 大きな性差はみられなかったが, 同性の役割の方が早く認知されるという傾向がみられた。
5) 群差については, 全体的に大人を想定した場合の方が同輩を想定した場合よりも性役割認知がすすんでおり, 特にD・C次元, 中でもDm特性・Cm特性についてその傾向が著しい。

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© 日本教育心理学会
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