教育心理学研究
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幼児の2重系列化課題における遂行に及ぼす対象配列の有意味化の効果
小野寺 淑行
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1981 年 29 巻 4 号 p. 314-322

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抄録

直径と高さに関して2次元的に系列化された円筒のマトリックスを見本として観察した後に, それを模写的に再構成する課題 (再生課題) に困難を示す幼児52名 (5 歳2か月~6歳4か月) を2群に分け, 相互に異なる訓練を与えた。実験群の訓練においては, 被験者に円筒を人物として見立てさせたうえで, さらに, たき火の絵, 雪ダルマの絵, カメラを補助具 (有意味化手がかり) として使用し, マトリックスの配列の規則性に対して有意味化の手続を施した。高さの次元に関しては, カメラで写真を撮る時に全員が写るように背の高さの順に並んでいるのであると有意味化した。また, 直径の次元に関しては, 雪ダルマの側にいるかたき火の側にいるかによって着ている衣服の量が異なるのだと意味づけた。つぎに, 有意味化手がかりを残置した状態で再生課題を遂行させ, 再生完了後にフィードバックを与えた。一方, 統制群の訓練では, 意味づけはなされず, 再生完了時にフィードバックが与えられたのみである。
訓練セッションでは, 3試行中2試行以上で完全再生を示した被験者 (達成者) の人数において実験群が統制群を上まわった。訓練直後のテストにおいては, 達成者の人数に関して両群間に差はほとんどなかった。しかし, 完全再生への近似の指標の1つである分類得点に関しては, 実験群の平均値が統制群のそれを有意に上まわった。1日後テストでは, 実験群の達成者数は再び増加したが, 統制群のそれを有意に上まわるものではなかった。しかし・完全再生への近似の指標としての位置得点, 系列得点, 分類得点のいずれかにおいても, 実験群は統制群を上まわった。
結果は, 有意味化の手続を含む実験群に対する訓練手続が, 直径のサイズに基づいて対象が分類されているという見本マトリックスの1つの規則性の認知を特に促進する効果を有することを示すものとして解釈された。

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© 日本教育心理学会
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