教育心理学研究
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幼児の社会的行動の発達に及ぼす成人 (教師) の交渉の影響について
三宅 和夫奥山 わか子
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1969 年 3 巻 2 号 p. 1-11,62

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抄録

北大幼児園の園児に組単位で, 一つは強制的, 命令的に, 他は幼児にも話をさせるようにしむけ相互に競争意識を起させるように冬期休暇の間, 家庭で手をよく洗うように話をしてやり, 後目各家庭を訪問し母親に面接して幼児の手洗いの実行度を調査し, 二つの話方のいずれがより効果的であるかを検討した。対象は年長組 (6才児の組) A, B, 年少組 (5才児の組) A, Bの計4 組で, Aの組には第一の, Bの組には第二の話方をした。話をする前日までの実行度と, その日帰宅後の実行度, 及び2日後の実行度を比較すると, 第一の話方を行つた場合は, 年長組と年少組の間に実行度に関して差が見られないが, 第二の話方の場合には, 明かに年長組において実行度のよくなつた者の割合が大きく, 従つて効果が大きかつたといえる。さらに, 同一年令の二つの組の間について見ると年少組では, 話方の相違による効果のちがいは一日目, 三日目ともに見られない。一方, 年長組では一日目では差はみとめられぬが, 三日目には明かに第二の話方の方が効果が強く残つていることが示された。
次に当日帰宅後, 母親に注意のあつたことを話した者の数について見ると, ここでも年長組と年少組の間にはつきりとした差があり, 年少組に対しては二つの話方のいずれによつても, その効果が少いことが明かとなつた。最後に, 年長組について母親に話をしたことと, 実行度の変化との間の関係を見ると, 話をした者で実行度のよくなつた者の数と, 話をしなかつた者で実行度のよくなつた者の数には大きな開きがあり実行度の高まることと, 話を母親にすることとの間には密接な関連が見られた。
結局, 年少組 (5才児) についてに, 二つの話方の行動変化に及ぼす効果には, はっきりとした相違は見られぬが, 年長組 (6才児) では, 話合いをさせ, 競争意識を持たせる話方をした方が, その効果は大で, 持続することが明かになつた。
また, そのような第二の話方は6才児になると5才児とくらべて急激にその効果が大となつてくることも明かにされ, 発達的に見ても興味のある事実が見出されたのである。第一の話方では命令的に幼児達に対して話をし, しかも教師がしらべ1ご行くということも話したのであるから, この方が効果が大であるように思われるが, この研究の結果は正に逆であつた。

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