抄録
(1) 体育科における生徒の問題行動は, 体育活動に必要な身体的ならびに運動能力のハンディキャップに基因するというより, ハンディキャップを考慮しない教師の指導のあり方に対する反感から生れるものが多い。総じて云えば課題過重に対する教師への反撥や逃避ということになろう。
(2) 他教科に成績の良いものが, 身体的な劣位に基づく体育における自己の不良評価を, 進学のため又は知的な興味によつて補償又は合理化し, 授業を無視する。
(3)両親の教育に対する無関心, 生徒の身体虚弱に基づく体育の否定観, 進学勉学のための否定論が, 生徒の消極的な学習態度をまねく。
(4) 体育科の指導にあつては, 生徒の身体的成長の最盛期を健康的に指導するという意味から, 身体的ハンディキャップをもつものに対しては, 体育を如何に好ましくさせるかの技術を, 他の者に対しては, 問題行動の心理的原因を事例的に研究し, 指導の適切を期さなければならない。