教育心理学研究
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幼児集団におけるリーダーシップ機能についての実験的研究
小林 さえ子斎藤 美智子
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1969 年 5 巻 4 号 p. 1-5,59

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抄録

ぬり絵の共同作業を課した, 幼児の実験的集団にみられたリーダーシップ機能の発達について, つぎのような諸事象が明らかになつた。(i) 集団の発達の水準は, リーダーシップ機能の発
達をもつてはかることができる。それは集団活動におけるエネルギーの節約と, よりよき集団目標達成のために, 集団におこるはたらきだからである。本実験によればリーダーシップ機能は, L・F型言動の出現-特定リーダー発生 (成層化) という段階をたどつて発達する。
(ii) 上にのべた事実を規定する要因の一として, 課題の要因があげられる。「四等分図形」の構造は, L・F型言動の生起および, リーダー発生を抑制するはたらきをもつ。一方, 「統一図形」はその両者を促進させる力をもつ。「統一図形」は社会的言動一般を「四等分図形」より多くひき起す。
(iii) リーダーシップ機能の発達は, 集団成員の年令的要因に関係をもつ。普通程度の知能をもつ4.0~4.5才児の集団では, 集団機能発達の水準はきわめて低いが, その水準は生活年令とともに高まつていく。
(iv) 集団機能発達の水準は, 生活年令に関係がある。しかし等しい生活年令であつても, I. Q. の要因によつてそれぞれ異なる。本実験においては, I. Q. 100~110集団とI. Q. 110~120集団の間に, L・F型行動の生起とリーダー発生の時期において, それぞれ6ヵ月の差があり, 後者の方が早期に出現した。つまり, I. Q. 条件や課題事態の条件をのぞいて, 生活年令だけで, 幼児の集団化発達を論ずることはできないのである。

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