教育心理学研究
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学校・家庭・地域社会連携のための教育心理学的アプローチ
アンカーポイントとしての学校の位置づけ
小泉 令三
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2002 年 50 巻 2 号 p. 237-245

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抄録
地域住民にとって地域社会が構造化され, 心理的に意味ある存在となるように, 学校がアンカーポイント (個人と環境との相互交流を促進する機能をもつもの) としての役割を果たすなら, 学校, 家庭, 地域社会の連携を進めることができると考えられる。本研究の目的は, そのための理論的枠組みと手順を示すことである。具体的手続きは, 次の3段階からなる。(1) 地域社会の構造化をめざして, 学校と校区を含めた全体を一つのシステムとしてとらえる。その際には, あくまでも子どもの教育を重視したシステムを考慮すべきであり, またシステム全体を視野に入れた生態学的アプローチが有効である。(2) 学校が地域社会で, 有効な第1次アンカーポイント (最初に接するアンカーポイント), それもできれば最も重要な意味をもつもの (プライマリー・アンカーポイント) となる可能性を探る。これは, 現在あまり進展していない学校から家庭・地域社会への貢献をめざしたものである。まず地域社会における学校の役割評価が必要であり, このために多面的な方法が考えられる。(3) アンカーポイントとなるための教育実践の開始である。これは, 予防や成長促進的アプローチで主体であり, 長期的実践によらなければ成果は期待できない。以上をもとに, 入学や卒業といった環境移行事態での適応援助を例にして, 具体的な方策やこれから取り組むべき課題, そしてそのための校内態勢について考察した。
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© 日本教育心理学会
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