教育心理学研究
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保健室登校の実態把握ならびに養護教諭の悩みと意識
スクールカウンセラーとの協働に注目して
伊藤 美奈子
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2003 年 51 巻 3 号 p. 251-260

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抄録

本研究では, 中学校における保健室登校の実態を調べるとともに, それに対する養護教諭の意識について明らかにすることを目的とした。小・中・高校の養護教諭285人に対し,(1) 保健室登校についての悩み,(2) 保健室での相談活動に関する意識と相談満足度,(3) スクールカウンセラー (以下sc) 配置の有無,(4) 昨年度と今年度の保健室登校児童生徒についての質問 (人数, 期間, 不登校のタイプ, 来室頻度, 経過, 他の教師との連携の様子など) からなる質問紙を実施した。研究1では, 回答が得られた保健室登校生徒男子106 人, 女子206人の回答を分析した。その結果, 保健室登校児童生徒の実態とそれに対する養護教諭の対応とその経過は, 校種によって異なるのであり, 不登校のタイプによっても差異のあることが明らかになった。研究IIでは, 保健室登校に関する悩みには〈多忙感〉〈連携の悩み〉〈対応上の不安〉という3つがあることが見出された。保健室登校を多く抱えるほど多忙感が大きく, 保健室登校に悩んでいる養護教諭ほど, 相談役割 (SC役) を兼ねることへの不安も大きいことが示唆された。さらに, 保健室登校とSC の有無の組み合わせによる3群を比較する中で, SCが配置された学校では, 保健室登校の人数が多いが, 対応上の不安は小さく, 養護教諭の相談活動満足度は高いことが明らかになった。それより, 養護教諭とSCとの連携の意義が検討された。

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© 日本教育心理学会
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