抄録
臨床場面では過剰適応は非適応的とされているが, 実証的な過剰適応研究は数が少ない。本研究では過剰適応の概念を理論的に整理し, その構造を検討することを第1の目的とした。続いて, 従来言われてきたように過剰適応が個人にとって非適応的に作用するのかを実証的に検討することを第2の目的とした。中学生を対象にした調査の結果, 過剰適応は個人の性格特性からなる内的側面と, 他者志向的で適応方略とみなせる外的側面から構成されることが示された。また, 過剰適応と学校適応感, ストレス反応との関連を検討した結果, 過剰適応の内的側面は学校適応感およびストレス反応にネガティブな影響を与えていたが, 適応方略として捉えられる外的側面は学校適応感を支える一方で, ストレス反応にも正の影響を与えることが示された。本研究の結果, 従来言われてきたこととは異なり, 必ずしも過剰適応的であることが非適応的とはみなすことができないことが示された。しかし, 他者志向的な適応方略で支えられる適応感の影にはストレスの存在が想定され, そのストレスが将来の不適応を予測する可能性について考察を行った。