2004 年 22 巻 3 号 p. 171-179
バルプロ酸(VPA)は各種てんかんの治療において有用な薬剤であるが、挙児可能な年齢に達した女性に投与を行う場合、催奇性の問題が無視できない。しかし、実際の臨床場面においては、原疾患の増悪を避けるため、妊娠中も本剤の投与が継続されるのが一般的である。疫学的研究からは、1,000 mg/日以上の投与量および70 μg/ml以上の血中濃度において、VPAによる奇形発現が高率となり、他種抗てんかん薬の併用もVPAの催奇性のリスクを高めることが判明した。また、これらの薬剤危険因子はいずれもVPAの毒性代謝産物への移行を促進する因子でもあることが代謝動態学的に示された。一方、VPAの毒性代謝産物の生成は、従来剤から徐放剤への置換により抑制されることも明らかとなった。以上より、妊娠中のVPA投与においては、高用量及び高血中濃度を避け、可能な限り単剤化を図るとともに、徐放剤使用を行うべきであると考えられる。