2025 年 43 巻 1 号 p. 32-40
要旨:本総説は、てんかん患者が利用できる福祉サービスに関する医師向けの診断書作成を支援し、特に精神障害用診断書の記載方法とその背景について詳述している。てんかんは医学的には神経疾患であるが、日本の福祉制度上は精神障害として扱われることが多い。そのため、精神障害用の年金診断書、精神障害者福祉手帳、自立支援医療診断書の作成が必要となり、これに違和感を抱く医師も少なくない。この現状を理解し、適切に対応できるよう支援することをめざした。障害年金の診断書では、発作の頻度や種類が等級判定に影響を与え、A・B(意識障害を伴う発作や発作による転倒)がより重視される。発作が治療により消失した場合支援が受けられない可能性があるということも含めると高次脳機能障害や抑うつなどの併存症の有無も十分に考慮する必要がある。日常生活能力や労働能力の記載も重要で、具体的かつ公平性のある表現が求められる。精神障害者福祉手帳は、経済的支援や就労支援を受けるために有用であり、診断書には日常生活の制限の程度を明確に記載する必要がある。自立支援医療診断書は主に医療費軽減のためのもので、通院精神療法や患者支援の実施内容を記述することが推奨される。障害者総合支援法に基づく医師意見書は、審査会の判断に影響を与えるため、支援の必要性を具体的に記載するとよいだろう。本稿では、多忙な医師が迅速かつ適切に診断書を作成できるよう、なるべく具体的かつ実践的な記載法を提供することをめざした。ただし実際の記載においては画一的な表現はなるべく避け、患者ごとの実態を正確に反映されるようお願いしたい。