1992 年 10 巻 3 号 p. 215-223
脳波上遅棘徐波と棘波群発を示す晩期発症の潜因性/症喉性全般てんかんを持つ39歳の男性において, 顔面の強直と自動症が交互に出現する発作群発状態に続発して, 数時間から十数時間にわたる言語障害を主体とする選択的高次脳機能の低下が月に1度の頻度で観察された。遷延性の言語障害を呈した時期に一致して, 両側性の鋭波, 鋭徐波などからなる多形性の突発波が持続的に記録され, また, 重篤な言語機能の表出および受容面での障害の存在にもかかわらず, 図形の模写や単純な口頭命令によって一定の身振りをする能力は保持されていた。本症例で出現した両側性突発波を伴う一過性言語障害を, 選択的高次脳機能障害を示すSpike-Wave Stuporと関連させて論ずるとともに, 運動要素を伴う意識消失発作に続発する遷延性高次脳機能障害の鑑別診断を行った。