右言語優位患者11名を含む側頭葉てんかん患者 (TLE) 77名について, アミタールテストによる言語記憶検査を行った。対象は, 左言語優位・左焦点群 (LL群) 23名, 左言語優位・右焦点群 (LR群) 43名, 右言語優位・左焦点群 (RL群) 5名, 右言語優位・右焦点群 (RR群) 6名であった。アミタール非注入時の記憶率は, 全体で83.1%(80.2~93.3%) であった。アミタール注入時の成績は, 右側注入時には, 右言語優位群 (RR, RL群) が著行明に低下し, 焦点側を含めた結果ではLR群のみが良好な成績を示した。左側注入時には, 左言語優位群の成績が著明に低下し, 焦点側を含めた結果では, RL群のみが良好な成績を示した。以上の結果から, 1) 言語優位側が左右のいずれであっても, 言語記憶は言語優位半球に依存していること, 2) TLEには焦点側半球に記憶低下につながる潜在的障害が存在すること, 3) 海馬を含む記憶系の保持には, 言語優位半球と海馬の機能維持がともに必要であることを結論した。