抄録
視覚刺激によって, てんかん発作が誘発される現象はよく知られているが, そのメカニズムはいまだ十分解明されていない。われわわは視覚刺激によって棘徐波が誘発される1例において, 視覚刺激中に認知機能検査を行った。その結果, 認知機能検査における反応時間は棘徐波の出現頻度と関連を持って変化した。一方, 棘徐波の出現頻度に差がない状態において, 認知機能検査での誤認反応数は誘因刺激によって増加した。
仮に, 視覚刺激中であっても, てんかん放電発生までは脳機能に異常がなく, てんかん放電によって機能異常が出現するとすれば, 両者は密接な関連を有すると考えられる。一方, てんかん放電が発生する前に, その発生閾値の低下という異常が惹起されると仮定すれば, 今回のように, 脳波所見よりもむしろ刺激と密接に関係した異常が観察されても矛盾がない。