実験社会心理学研究
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原著論文
行政に対する信頼の醸成条件
藤井 聡
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2005 年 45 巻 1 号 p. 27-41

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抄録

本研究では,公共事業の合意形成問題における公共受容の問題を考えるために,受容意識に関わる因果関係と信頼の醸成に関する仮説を措定し,それを検証するための実験を行った。すなわち,受容意識は自由侵害感と公正感に,公正感は手続き的公正感と分配的公正感と公共利益増進期待に,そして,手続き的公正感と公共利益増進期待は行政に対する信頼にそれぞれ影響を受けるという仮説を措定した。また,公共事業の趣旨を理解している場合には,そうでない場合よりも,その公共事業の実施者に対する信頼の水準は高くなるという仮説を措定した。以上の仮説を検証するために,都心部の渋滞や大気汚染を緩和する目的で都心部への自動車流入に関する罰金を伴う規制施策を実施するという想定のシナリオ実験(n=800)を行ったところ,以上の仮説を支持する結果が得られたと共に,行政への信頼は受容意識,自由侵害感,公正感,分配的公正のそれぞれに対しても直接的な影響を及ぼしていること,ならびに,公共事業の趣旨の教示の信頼に対する効果は,罰金額が一万円の場合の方が千円の場合よりも小さいという結果が得られた。

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© 2005 日本グループ・ダイナミックス学会
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