実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
Print ISSN : 0387-7973
ISSN-L : 0387-7973
原著論文
向社会的行動における競争的利他主義の検討
阿形 亜子釘原 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 53 巻 2 号 p. 108-115

詳細
抄録

近年,好ましい人物であるとの評判を獲得できることが向社会的行動を引き出すという競争的利他主義(Van Vugt, Roberts, & Hardy, 2007)が,多くの研究で注目を集めている。そこで本研究では,個人の貢献にともない評判が形成されうる状況がパフォーマンスを促進するかどうかを検討した。発展途上国に寄付する物品を作成する場面を用いて,貢献量を他者に呈示できる個人条件と,自己の貢献量が提示できない集団条件を設定し,実験をおこなった。併せて,作業量に伴って参加者自身に金銭報酬が与えられる物質的報酬条件との比較をおこなった。その結果,寄付物品作成場面を用いた潜在的報酬条件において,集団条件よりも個人条件でパフォーマンスが高まり,評判が形成されうる状況が寄付行動を促進することが示された。一方,潜在的報酬条件と物質的報酬条件の間で,パフォーマンスに差はみられなかった。最後に,実験操作の問題点について考察し,向社会的行動の促進要因としての評判の効果について議論をおこなった。

著者関連情報
© 2014 日本グループ・ダイナミックス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top