実験社会心理学研究
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原著論文
災害ボランティアの組織化のための戦略
大門 大朗渥美 公秀稲場 圭信王 文潔
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2020 年 60 巻 1 号 p. 18-36

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抄録

本研究は,2016年に発生した熊本地震後の2町村(益城町・西原村)の災害ボランティアセンター(災害VC)の運営の事例について,インタビューと参与観察により,組織論的観点から分析したものである。災害VCの組織モデルの比較研究からは,混乱を回避することを主眼に据える管理・統制モデルが益城町災害VCを,課題の解決を主眼に据える即興・自律モデルが西原村災害VCを捉える上で有効であることを明らかにした。そして,熊本地震においては,被害の最も大きかった益城町から,管理・統制モデルは現場に根ざした支援から垂直的に,即興・自律モデルは支援の届かないところ(西原村)へ向かうことで水平的に支援が離れていってしまうことで,構造的空隙が生じていた可能性があることを指摘した。その上で,多様なボランティアによる支援を展開する上で,即興・自律モデルを目指す必要があるものの,被害の大きいエリアでは管理・統制モデルが現れやすい。結果的として構造的空隙が生じないよう,即興・自律モデルを被害の大きいエリアで意図的に生成する必要があることを,災害ボランティアの社会運動的側面から提示した。

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© 2020 日本グループ・ダイナミックス学会
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