論文ID: 1708
怒りの表出に焦点を当てた従来の研究では,親密な人間関係を維持するためには怒りを抑制し制御することが重要であるとされてきた。その一方で,怒りを示す行動には相手の行動制御機能や自己開示機能が備わっているという点から,人間関係の親密化を促進する契機になると考える研究者たちもいる。そこでわれわれは,怒りを表出するほど親密な関係が継続しやすいと予測して,分析を行った。質問紙研究において,大学生参加者たちに最も印象に残った異性との失恋経験を想起させ,その経験について,交際期間と日頃怒りを表していたレベルを評価させた。これらのデータについて生存時間分析を行ったところ,強くはないが恋人に怒りを示していたと答えた参加者ほど,交際期間を有意に長く報告することが確認された。こうした結果を受けて,親密な人間関係においてみられる怒りの関係継続効果が議論された。