実験社会心理学研究
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〈実験社会心理学研究〉に関する研究
矢守 克也
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論文ID: 2006

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抄録

本論文は,社会心理学における実験的研究について検討した展望論文である。特に,実験の概念をより広義なものへと拡張し,実験という手法が本来有する豊かなポテンシャルをより大きく引き出す方向で,実験社会心理学の領域を再構築することをねらいとした。一般に,典型的な実験室実験と文化・歴史的な視点を重視する現場研究との距離は非常に大きいと見なされている。しかし,中間部に,「アイヒマン実験」や「実験の史学」などを配置すると,両者の連続性を確認できる。その上で,実験社会心理学研究の拡張を2つの方向から構想した。第1は,草創期のグループ・ダイナミックスにおける実験研究がそうであったように,実験室ならではの生態学的特性を活かしつつ,人間の実存性や社会のリアルな生態に接近するための回路を設け,実験室実験に現場研究の長所を取り込む方向性である。第2は,「実験の史学」のように,現実社会を対象とした研究に,実験操作に匹敵する比較条件を設定するための仕組みを導入し,現場研究に実験室実験の美点を取り込む方向性である。こうした志向性を有する具体的な事例を社会心理学,歴史学,防災・減災研究の領域から紹介し,新たな実験社会心理学研究の構想を提示した。

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© 2020 日本グループ・ダイナミックス学会
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