論文ID: 2012
自由記述方式の質問をもちいた過去の研究では,人々にとって自由意志は「何ものにも制約を受けず,自分の心理状態にそって行動を選択する」ということを基本的に意味すると示唆されている。しかしながら,人々の自由意志信念に関する既存の尺度は,人々の素朴な自由意志概念ではなく,研究者の理論的な自由意志概念にもとづいて作成されてきた。そこで著者らは他行為可能性,行為者性,制約からの自由の3つの因子から構成された,人々の素朴な自由意志信念を測定するための新たな尺度を作成した。本論文では,3つの研究で約4,000人の回答者(大学生および一般成人)が分析にふくまれている。その結果,予測されていた因子構造や尺度の信頼性が確認された。それにくわえて,他行為可能性と行為者性の得点は,道徳的な責任帰属の得点と正の相関関係をもつことが明らかになった。これらの知見は,心理学および哲学の文献と照らし合わせて議論されている。