論文ID: 2406
防犯と厳罰は,日本の社会ならびに学界において重要なテーマとなってきた。しかし,防犯と厳罰の関係,具体的には,公的機関による犯罪予防のための情報(防犯情報)の提示が厳罰傾向にどのような影響を与えるかはこれまで検討されてこなかった。本研究では,日本人975人を対象に,私的な防犯活動の重要性を強調するチラシを模した情報を提示した。その結果,以下のことが明らかになった。(a)防犯情報の提示は厳罰傾向を強める。(b)この関連は社会的犯罪不安によって媒介される。これらの知見に基づき,防犯を担う公的機関が市民に対して防犯情報を提示する際には,この潜在的な作用に留意する必要性があることを論じた。