超高齢社会の日本において,あらゆる世代の人々が協力して社会問題に対峙することが求められている。しかし,それを阻む要因の1つとして高齢者差別が存在するため,その背景要因の1つである高齢者への否定的態度を軽減する必要がある。よって本研究では,簡潔かつ大人数を対象に実施できる否定的態度の軽減方略として,高齢者ステレオタイプに反する情報を記載した説明文の提示に着目する。本研究では,日本人577名(20–64歳)を対象としたオンライン実験を実施した。その結果,上記の実験操作を受けた実験群では,無関連の話題の説明文を読んだ統制群よりも否定的態度が低かった。また,協力行動の指標として1度限りの2者間公共財ゲームを実施したところ,統制群よりも実験群では,相手が高齢者の場合と相手が若者の場合における提供ポイントの差が小さくなった。よって,高齢者ステレオタイプに反する情報を提示することで,高齢者への協力行動が促進され得ると言える。ただし,実験操作の効果は小さいため,この方略のみで否定的態度が大きく軽減し,高齢者への協力行動が著しく促進されるとは言えない。よって,今後の研究を通して実験操作の改善が期待される。