抄録
同一の被験集団に, 「分離図形」と「単一図形」を交互にあたえて, ぬり絵作業をさせた結果,
i) 「単一図形」事態では「分離図形」事態におけるより, 社会的言動一般が多く発生した。ii) 社会的言動の類型をみると, 「単一図形」事態では, 集団の成層化を促進する性質をもつ, 優位 (無視) ・服従の型の言動が多く, 「分離図形」事態では, 成層化を抑制する性質をもつ客観型の言動が多かった。
iii) 「単一図形」事態では「設定リーダー」が, 顕著にリーダーシップをとることが多かったが, 「分離図形」事態では, 設定リーダーは潜在し, 顕著なリーダーとなることはきわめて少なかった。
以上, 同一の集団はぬり絵の図柄構造の差に応じて, 「構造崩壊」と「再構造化」を交替した。つまり, 交互に「集団性の水準の抵い集団」となったり, 「集団性の水準の高い自立的集団」となったりしたのである。本実験課題のぬり絵図形構造は, 成層化を決定する諸要因 (力学的見地からいうならば諸力といえる) 中の一つである課題要因 (課題自体のもつ力) を証明するものである。
なお, ついでにいえば, 「分離図形」作業においても, 場面構造も教示など条件をかえることによって, リーダーシップ機能を高揚させることは不可能ではない。しかし, 本実験では, 図形の本来もっている力を問題としたのである。