実験社会心理学研究
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成功あるいは失敗評価がフォロワーのモラールおよびリーダーシップ機能認知に及ぼす効果
古川 久敬
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1972 年 11 巻 2 号 p. 133-147

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抄録
本研究の目的は, 筆者が仮設的に提唱したリーダーシップ影響過程に関するモデルを, 実験的に検証することであった。われわれは, 集団成員 (フォロワー) に対して与えられた成功ないしは失敗という評価が, 彼らのモラール (作業に対する満足度, グループ・エスティーム, 集団凝集性) とリーダーシップ機能認知に及ぼす効果を検討した。
被験者は, 120名の中学生男子で, 彼らはニア・ソシオメトリーをもとに, 4~5名の実験集団 (相互選択の成員よりなる) に割り当てられた。本実験は3セッションよりなり, 各セッションにおいて, 実験者によって与えられたリーダー (PないしはMタイプ) のもとで, 被験者はTAT図版をもとに, 15分間。班でよく話し合って物語を作成した。第2, 第3セッションでは, これらの物語は, 評価者によって成功か失敗かの評価を受ける (実は, この評価の内容は, 実験前に決定されていた)。各セッションの最後に, 被験者のモラールおよびリーダーシップ機能認知得点が, 質問紙によって測定された。これらの得点は分散分析 (LindquistタイプIII, リーダーシップ×評価×セッション) により検定された。結果は次のとおりであった。
(1) リーダーのリーダーシップ・タイプにかかわりなく, 集団活動のアウトプットに関する成功評価のは, 被験者のモラール得点を有意に上昇させた。他方, 失敗評価は, それを有意に下降させた。
(2) このモラールの変化と相まって, 成功評価, および失敗評価は, 被験者のリーダーシップ機能認知を, それぞれ, PM, pmタイプに変化させた。
上の結果は, 評価内容の差異によって生起された被験者の心理的状態の違いという観点から考察された。さらに, 筆者は, この心理的状態がリーダー-フォロワー関係に影響を及ぼす変数の一つであるという点にも言及した。
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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