実験社会心理学研究
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共感性の実験的研究
足立 明久
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1973 年 12 巻 2 号 p. 78-90

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抄録

本研究の目的は次の通りである。
(1) 共感性が主してリーダーや販売員の選抜テストに有効なmeasureとなりうるかどうか実証的に検討する。
(2) 共感性の構造的要因を探索し, 適性検査や, 共感性に関する訓練等の領域に若干の示唆を提供する。
共感性は従来から用いられているような共感性テストの方法と, 現実の対話場面から抽出されたcounselor empathyから構成されるような本研究独自の実験的方法によって測定された。そして, 7種類の被験者群と, 10個の心理テストのバッテリーが組まれた。結果と考察は次の通りである。
(1) counselor empathyはリーダーの実務成績と有意な相関関係にあることが見出されたが, 共感性テストは有意ではなかった。
(2) 共感性テストは共感性の測定というよりは, むしろ常識的な平均人の選別に有効であると考えられる。
(3) 共感性の構造的要因については明確な心理的特性が見出されなかった。つまり, 共感性の成立において, 社会的成熟度等若干の心理的特性が基本的なバックグランドになっていることが認められたが, 全体的な結論としては共感性及びその心理的特性は性格的ないし素質的なものというよりは多分に状況的なもの (たとえば, 状況の影響をうけやすい態度的なものとか, 心的力動性等) と考えられよう。これは共感性が単なる特性論的なものではなくて, もっと状況の中に存在する人間の全体的な精神発達と深い関係があることを意味しており, このことは「適性検査」や「共感性に関する訓練」等の領域に対してもひとつの示唆を提供しているものといえよう。

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