実験社会心理学研究
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鏡映描写テストのTask Performanceに及ぼす言語教示の効果
大里 栄子小川 暢也中野 重行宮本 正一日高 史子
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1973 年 12 巻 2 号 p. 97-107

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抄録

鏡映描写テスト施行にあたっての従来標準的に与えた教示と, とくに速度を強調した教示, および正確度を強調した教示により, その速度や正確度にどのような効果を与えるかを検討するものである。このさいに, 被験者の不安水準をも同時に考慮した。
対象は年令16~17才の女子高校生に対して予め施行したMAS得点の中より高得点の者24名 (高不安群), 低得点の者24名 (低不安群) 計48名を選択した。その得点範囲は, 高不安群28~39, 低不安群8~13であった。
実験デザインは, 教示条件, すなわち鏡映描写テストの施行法のみの教示, 速度を目的とした教示, および正確度を目的とした教示の3水準, 不安水準2水準, 鏡映描写テスト5試行で3×2×5のfactorial designであった。
鏡映描写テストは1試行1分間で5回分散試行を行ない, 速度, 正確度, 達成作業度 (K- valueの3点について測定した。テスト終了後, 教示に対するPMリーダーシップパターン, およびテスト時の自己認知を質問紙法により測定した。
主要な結果は次の通りである。
1). 速度: 対照群, 速度強調群, 正確度強調群のいずれも試行回数によって増大したが, 特に速度強調群における高不安群の速度の増加は著明であり, 他群よりも有意に高い速度を示した。
2). 正確度: 対照群においては, 高不安群が有意に低不安群よりも正確度は高いが, 速度強調群においては対照群に比べ高不安群に誤り回数が著しく増加し, 低不安群よりも正確度は低い。正確度強調群は低不安群の正確度が対照群よりも改善され, 高不安群と差を認めなかった。
3). 速度と正確度との相関: 全体的には両者には逆相関が認められた。しかし, 教示条件別では, 速度強調群における高不安群にのみ逆相関が認められた。この関係は恒常性をもたないことが判明した。
4). 達成作業度: 速度と正確度2変量についてMardiaの法により検討すると, 対照群は全体の速度と誤り回数の平均値で示される円の中心に最も近い位置についで正確度強調群は誤り回数の少い方向に, 速度強調群は誤り回数の多い方向に位置することが予想された。
また各群の不安度による違いは対照群にのみ, 高不安群が速度, 正確度とも低不安群よりも高い傾向が認められた。

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