実験社会心理学研究
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恐怖喚起の程度, 受け手の性および不安傾向が態度変容に及ぼす効果
深田 博己
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1973 年 13 巻 1 号 p. 40-54

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抄録

本研究は, 恐怖コミュニケーションの説得効果に及ぼす恐怖喚起の程度, 受け手の性および不安傾向の影響検討するために計画された. 被験者は868人の大学生であり, 実験群の被験者は, 梅毒の脅威を訴え, それに対処するために血液検査を受けることを勧告している強・弱2水準の恐怖コミュニケーションの一方にさらされ, その前後に質問紙に答えた.
本実験で得られた主な結果は次の通りである.
1. 態度変容と行動変容の両方において, 強恐怖コミュニヶーションは弱恐怖コミュニケーションよりも効果的であり, 仮説Iが支持された.
2. 男性の受け手に比較して女性の受け手の方が恐怖コミュニケーションによってより説得され, その差は強恐怖コミュニケーションが与えられた場合の方が大となり, 仮説IIIが支持された. ただし, こうした傾向は態度変容においてはあまり明瞭でなかった.
3. 不安傾向の低い受け手は, 態度変容において, 強恐怖コミュニケーションと弱恐怖コミュニケーションから同程度の影響を受けたが, 不安傾向の高い受け手は強恐怖コミュニケーションによって態度変容が増加し, 弱恐怖コミュニケーションによって減少するという, 仮説IIと逆方向の相互作用効果がみられた. そして, 行動変容においては不安傾向の影響がまったくみられず, 仮説IIは支持されなかった.
仮説IIに関する結果については解釈が困難であったが, その他の結果については, すべて恐怖事態に対する受け手の情緒的反応と認知的反応から解釈することが可能であった.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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