実験社会心理学研究
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集団内の感情的相互関係とパフォーマンスに及ぼす失敗評価の効果
深尾 誠宮本 正一
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1976 年 16 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

本研究は集団内の感情的関係により生産性に対する同じ失敗評価でも認知面に及ぼす効果が異なり, そこに生じた効果の違いが集団のパフォーマンスにまで反映するであろうという仮説のもとに実験が行なわれた。感情的関係の違いはソシオメトリックテストにより, 気の合う人同志, 気の合わない人同志のペアを作ることにより操作された。被験者は小学校4年生男女各40名で, 同性のペア40組をつくった。これらのペアは2 (二者関係の良し・悪し) ×2 (失敗評価の有・無) の実験計画にわりあてた。課題は二人で協調し合いながら, S字型の枠内をできるだけ早くはみ出さないようにたどる共同作業であった。作業は6試行, 失敗評価は4, 5, 6各試行の前に与えられた。認知面の変化は失敗評価を与える前後に6項目からなる質問紙を施行することでとらえた。
主な結果は次の通りである。
1) 認知面では, 二者関係が非好意的な集団に失敗評価が与えられた時, 最もその効果が大であった。すなわち, 相手に対する評価を低めた人数が最も多かった。
2) 集団メンバーのこのような認知面の変化はパフォーマンスに明確に反映しなかった。つまり, 感情関係が非好意的な集団に失敗評価を与えても, スピードが遅くなりエラー数が増加するという傾向は統計的有意差を示さなかった。
3) 失敗評価は均一的にエラー数を少なくする効果を示した。
4) 作業の上手さを自己評価する際に, 失敗評価に対して男児は自己評価を下げるが, 女児は逆に自己評価を上げるという結果が得られた。
これらの結果から認知面だけの変化では集団の生産性を予測しえないことが考察された。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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