実験社会心理学研究
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集団間関係ならびに個人・集団の達成度が集団内・集団間の報酬分配に及ぼす効果
久木田 純
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1984 年 23 巻 2 号 p. 125-137

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抄録

本研究は, 自集団以外の他集団と共に課題を遂行する状況において, 集団間の友好性と達成度の高低, 集団成員間の達成度の高低が, 集団内および集団間の報酬分配の公正感をどのように規定するかを検討した。
集団間の関係が (1) 友好的である場合を実験I, (2) 非友好的である場合を実験IIとし, 各々の実験において友人二人 (個人達成度の高・低) からなる2集団 (集団達成度の高低) に対し報酬を支払う相互依存的状況が設定された。集団内分配と集団間分配において公平 (equity) と平等 (equality) の二つの分配原理につき, 個人決定と集団決定の状況で分配原理の選択を行なわせた。
主な結果は以下の通りであった。
(1) 個人決定による集団内分配原理の選択では, 実験I・実験IIの両者において一貫して高達成度の成員が平等原理を, 低達成度の成員が公平原理を選択した。
(2) 集団決定による集団内分配原理の選択において, 実験IIの低達成度集団以外の条件では, 公平原理よりも平等原理が多く選択され, また, 平等原理を選択した集団での集団決定においては高達成度の成員の強い影響力があったことが見出された。
(3) 個人決定による集団間分配原理の選択においては, 実験Iでは公平原理よりも平等原理が多く選択され, 逆に実験IIでは平等原理よりも公平原理が多く選択された。
(4) 集団決定による集団間分配原理の選択においては, 実験Iでは, 集団の達成度にかかわりなく平等原理が多く選択され, 実験IIでは, 高達成度の集団は平等を多く選択し, 個人決定とは異なる選択をしたのに対し, 低達成度の集団は個人決定と同様公平原理を多く選択した。
これらの結果については, 利己的・非利己的分配の観点から考察され, 特に, 低達成度条件においてはそれが個人であると集団であるとを問わず, 非利己的分配原理の選択を行なうものと考察された。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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