実験社会心理学研究
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社会的相互作用過程における期待が対人知覚の変容に及ぼす効果
崔 光善
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1985 年 24 巻 2 号 p. 135-141

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抄録
本研究は, 他者の期待によって起こった自己行動の変容を知覚した被期待者は, 自己概念およびそのような期待を持つ他者についての知覚をどのように変容させるかを解明することによって, 社会的相互作用過程で期待効果が対人知覚の変容に及ぼす影響を検討した。
期待条件と統制条件に割当てられた被験者たちは, セッション1とセッション2間の課題遂行得点の差の中央値によって各々2群 (大差群, 小差群) に分けられ, 対人評価尺度で自己と教師を評定した。セッション間の自己と教師についての評定の差が求められた。
主な結果は次の通りであった。
(1) 期待操作が行なわれた条件 (期待条件) の被験者の方が, 期待操作が行なわれなかった条件 (統制条件) の被験者の方より評定対象についての評定得点の変化がセッション間で大きかった。
(2) セッション間の課題遂行得点差の大きい群が, 小さい群よりも対人評価尺度の評定得点差も大きかった。また, 教師からの期待の有・無とパフォーマンス差の交互作用も有意であった。すなわち, 期待によって起こった自己行動の変容は, 対人知覚の変容にも影響を及ぼすことが見出された。
(3) 対人知覚尺度の下位項目についての分散分析の結果から, 社会的相互作用を表わすパーソナリティ特性語 (意欲性, 責任性, 勤勉さ, 元気さ) と被期待者のパフォーマンスの間に関係があることが明らかになった。
ある状況の行動から推論されたポジテイブな自己帰属は, 新しい状況での行動と認知過程にポジティブな影響を及ぼすと考察された。
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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