実験社会心理学研究
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“Japanese American”の成立
林 春男
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1987 年 27 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

本研究は, 太平洋戦争下の米国本土で起こった日系人の強制収容が日系二世における“Japanese American”というエスニック・アイデンティティの形成の契機であると考え, この社会的カテゴリーの成立と内在化の過程を中心に検討した。UCLA収蔵のJARPアーカイブに含まれる, アマチ収容所の所内新聞“Granada Pioneer”の英語欄の第1面トップ記事 (283件), 論説記事 (81件), 投書 (108件) を分析対象として, (1) 日系人を指示する社会的カテゴリーの使用, (2) “Japanese American”の発言者の同定, (3) 記事の内容分析を行った。その結果, 以下のような点が明らかになった。
(1) “Japanese American”という社会的カテゴリーは, 1943年1月にアメリカ陸軍が日系二世の志願兵の募集を再開するのを契機として使用され始め, 1944年1月の日系二世に対する徴兵復活以降, 1945年1月に日系人の西海岸地域立入禁止令が解除されるまでの期間にもっとも頻繁に使用されていた。
(2) “Japanese American”は最初連邦政府関係諸機関が日系二世を指示する他者規定の社会的カテゴリーとして提唱され, 日系二世自身がこの概念によって自己規定するまで, 1年7カ月を要していた。
(3) “Japanese American”は日系人同士の関係や, 日常生活の場である収容所内の関係では顕在化せず, 連邦政府の動向やカリフォルニア州の世論動向との関係で, 顕在化した社会的カテゴリーであった。

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