実験社会心理学研究
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聞き手の集団内地位が開示動機の推定に及ぼす効果
小口 孝司
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1990 年 30 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

本研究では, 従来の自己開示研究では分析が十分ではない集団状況を取り上げ, その中でも特に今回は聞き手の集団内地位を独立変数とした。一方, 従属変数としては, 自己開示研究と帰属研究の関連を考えて, 自己開示動機の推定を取り上げた。そして集団内地位が, 自己開示動機の規範的動機の推定に及ぼす効果を, 取り入り理論 (Jones & Wortman, 1973) から予測した。仮説は, 「集団内地位が高いメンバーは, 地位が低いメンバーに比べ, 新たに加わるメンバーの自己開示をより規範的動機に基づくものと見なすであろう。」であった。
被験者は大学生の男女43名であった。被験者を集団にし, 今後この集団での活動を予期させた上で自己紹介をさせた。他のメンバーからの印象評定の結果であると称して, 集団内地位を操作した。その後, 他のメンバーに対する印象評定をさせた。そして今回参加していないが, 次回から参加が予定されている者 (実験協力者) のテープによる自己開示 (刺激) を聞かせた。続けて次回から参加が予定されているメンバーへの印象評定だと称して従属変数を測定した。
その結果, 集団内地位が規範的な自己開示動機の推定に影響を及ぼすことが示された。すなわち, 集団内地位が低い者よりも, 集団内地位が高い者の方が, 参加が予定されているメンバーの自己開示動機を, より規範的なものと見なしていた。このことから, 自己開示研究において, 今後集団を5象としていくことが必要であることを述べた。

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