実験社会心理学研究
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自己開示およびそれに伴う現実自己と理想自己のズレの変動に影響を与える要因に関する研究
中川 薫
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1991 年 31 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

本研究は, Duval & Wicklundの客体的自覚理論 (1972) に基づいて, 自己開示度とそれに伴う現実自己と理想自己のズレの変動を客体的自覚の喚起度, 聞き手の態度, 元々もっていた現実自己と理想自己のズレの度合から説明することを目的としている。56人の女性被験者は予備テストによって元々の現実自己と理想自己のズレが大きい群と小さい群とに分けられている。被験者はテープに録音された自分の声を聞く (客体的自覚が高い条件) かあるいは他人の声を聞き (客体的自覚が低い条件), その後で実験者 (聞き手) から与えられた話題にそって自己開示をする。聞き手は被験者に対して受容的な態度あるいは非受容的な態度をとる。その結果, 自己開示に関しては, (1) 客体的自覚が高い条件では, 聞き手の受容的態度は非受容的態度より自己開示を促進するが, 客体的自覚が低い条件では聞き手の態度による差はない, (2) 現実自己と理想自己のズレの度合によって, 聞き手の態度が自己開示に与える影響力に差があるとはいえない, (3) 現実自己と理想自己のズレの度合が小さい群の方が大きい群より自己開示度が高い, ことが示された。現実自己と理想自己のズレの変動に関しては, (4) 元々もっているズレの度合が小さい群は, どの実験変数の影響も受けず, ズレの変動が小さい。(5) 元々もっているズレの度合が大きい群では, 客体的自覚が高い条件下で聞き手が非受容的態度をとると, ズレが拡大する, ことが示された。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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