実験社会心理学研究
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メッセージの反復と圧力が説得の受容と抵抗に及ぼす効果
上野 徳美
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1991 年 31 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

本研究は, 説得メッセージの反復提示と圧力 (自由への脅威) が説得の受容と抵抗の両側面にどのような影響を及ぼすかについて検討することを目的とした。本研究で用いられた要因は, メッセージの提示回数 (1, 3, 5回) と圧力 (大小) の2要因であり, 2×3の要因計画のもとに実験が実施された。実験では順態度的メッセージが用いられ, 被験者にはテープ・レコーダーを通してメッセージが提示された。メッセージの効果は質問紙によって多面的に測定された。本研究では, 説得メッセージの圧力の主効果が生じるとともに, メッセージの反復提示と圧力との交互作用効果 (反復提示の効果はメッセージの圧力の大きさによってかなり異なった様相を呈する) が得られるであろう, と予測した。
実験の結果, まずメッセージの圧力の主効果が認められた。圧力の小さいメッセージにおいては説得の肯定的な効果が生じたのに対して, 圧力の大きいメッセージにおいては反対に説得への抵抗や否定的効果が生じた。また, メッセージ評価や意見といった測度において, メッセージの反復提示と圧力の要因の交互作用効果が得られた。すなわち, 圧力小のメッセージでは, 提示回数と説得効果の間に逆U字型 (3回提示の時に肯定的効果が最大) の傾向が生じ, 過度な反復 (5回提示) は否定的効果を引き起こした。他方, 圧力大のメッセージでは反対にU字型の傾向が認められ, 3回提示の時に否定的効果が最大であった。後者のU字型のパターンに関しては予測と一部異なったものの, それ自体注目すべき結果を示した。
以上の結果は, メッセージの反復という要因が説得の受容や抵抗を規定する重要な要因になりうることを示した。また, メッセージ反復による説得の受容や抵抗の生起過程は, リアクタンス理論とELM (Elaboration Likelihood Model: 精緻化可能性モデル) をもとに考察された。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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