実験社会心理学研究
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自己能力診断が可能な課題の選好を規定する要因 (2)
能力の統制可能性と重要・有益性および自己能力予測
沼崎 誠
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1992 年 32 巻 1 号 p. 15-26

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抄録

本研究の目的は, 評価する能力の特質により, その自己の能力に関する情報収集行動が異なることを検証することにあった。能力の統制可能性として能力の先天性-後天性を教示により操作した。また, 能力の重要性・有益性の知覚を独立変数とした。さらに, 自己の能力の高低を被験者に予測させた。成功時の診断性と失敗時の診断性を操作した4課題から課題を選択させ, さらに, 各課題のやりたさを回答させた。
仮説は次の通りであった。1) 能力が先天的で改善不能であると教示された被験者は, 後天的で改善可能であると教示された被験者に比べ, 自己の能力が低いことを示す診断性の高い情報を選好しないであろう。2) 能力の重要性・有益性を高く知覚した被験者は, 自己査定動機が強く, 自己の能力が高い能力であることを示す情報であれ, 低いことを示す情報であれ選好するであろう。3) 自己の能力を高く予測した被験者は, 自己査定動機が強く, 自己の能力が高い能力であることを示す情報であれ, 低いことを示す情報であれ選好するであろう。
重要性・有益性を高く知覚した被験者は, 低く知覚した被験者に比べ, 自己査定的行動を取り, 仮説2は支持された。また, 先天的能力であると教示された被験者は, 重要性・有益性を低く知覚した場合には, 自己高揚的行動を取り, 仮説1は部分的に支持された。また, 自己の能力を高く予測している被験者は, より自己査定的行動を取ることが示され, 仮説3は支持された。本研究の結果は, 評価する能力の特質により, 自己査定動機と自己高揚動機の強さが異なり, 自己の能力に関する情報収集行動が異なることを示唆している。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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