抄録
コンピュータサイエンスの分野の一つにCSCW (Computer-SupPorted Collaborative Work) がある。CSCWは, 人間 (組織) と人間 (組織) の間の通信システムやハードウェアまで含めた協調作業支援技術や, グループとシステムの関係を研究対象とする。従来, 工学的なシステムデザインには, 技術指向的デザイン, アナロジカルデザイン, 直観的なデザインなど種々のデザインアプローチが用いられてきた。CSCWの構成要素の一つはグループ (人間) であり, グループの振る舞いを理解し, グループに関する理論, 所謂, 利用者指向のデザインアプローチをとることが, CSCWにとっては重要である。
本稿では, よりよいシステムデザインを狙いとして, 実際の電子コミュニケーション, コラボレーションの記録の分析事例について述べる。具体的には, CSCWで利用されている会話分析手法 (議論モデル (Argument Structure) を用いた電子会話分析手法) を紹介し, さらに電子メールおよび対面会議からなる実際のグループ作業の記録 (約28人月のプロジェクト) の分析結果について述べる。