実験社会心理学研究
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学級におけるインフォーマル地位と家庭環境の関連性に関する実証的研究
西本 裕輝
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1998 年 38 巻 1 号 p. 1-16

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抄録

本研究の主な目的は, 学級における資源を媒介としたインフォーマル地位と家庭環境の関連性を明らかにすることである。
イギリスの社会心理学者, 教育社会学者であるHargreavesによれば, 資源とは, ソシオメトリック地位 (人気) と社会的勢力地位 (勢力) の基盤のことである。学級成員が資源を持つと, それによって彼は二つのインフォーマル地位 (ソシオメトリック地位, 社会的勢力地位) を得ることができる。つまり, 学級におけるインフォーマル地位は, 資源によって規定されているのである。若干立場は異なるが, 学級内のインフォーマル地位の規定要因を解明した研究には, 田崎 (1976) のものなどがあげられる。
しかし, インフォーマル地位の規定要因には, もう一つ重要なものがある。それが家庭環境 (いわば学級外要因) であるが, そのことに関しては, 特に社会心理学の分野では, ほとんど注目されてこなかったと言ってよい。
そこで本稿では, 中学校における調査を通して, 学級外要因 (家庭環境), 学級内要因 (資源) の双方を変数として同時に投入して分析し, 両者とインフォーマル地位との関連を実証的に明らかにした。分析の結果を要約すると以下のようになる。
(1) 学級における子どもの資源は, 確かにインフォーマル地位を規定している。その中でも特に「思いやり」が最も強い影響を与えていた。ゆえに資源は, 学級集団のインフォーマル構造を把握するうえで, 重要な変数であると言える。
(2) その資源も学級集団外の要因である家庭環境からの影響を受けている。
(3) 家庭環境はインフォーマル地位に対して直接効果だけではなく, 資源を介した間接効果も与えている。

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