実験社会心理学研究
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上司への取り入り行動に関する研究
有倉 巳幸
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1998 年 38 巻 1 号 p. 80-92

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抄録

本研究は, 部下が組織内で上司に対して用いる取り入り行動と目標やリーダーシップスタイルなどの諸変数との関係を検討した。その際, 取り入り行動を他者高揚や意見同調などの下位方略ごとに検討することを本研究の主目的とした。
結果は以下のとおりである。1) 予測どおり, 個人・私的な目標だけでなく, 組織・公的な目標も取り入りと関係していた。取り入りの下位方略ごとにみると, 組織・公的な目標は, 他者高揚や親切な行為といった方略とポジティヴに関連していた。2) リーダーシップの機能ごとにみた結果, 上司が集団維持的なリーダーであるという認知と他者高揚や親切な行為との間にポジティヴな関連性がみられた。また, 三隅 (1978) のリーダーシップの四類型について検討した結果, PM型やpM型の上司には, 積極的な取り入り方略である他者高揚を多用し, 一方, Pm型の上司には, 消極的な取り入り方略である意見同調を用いていた。3) 組織の雰囲気との関連性を検討したところ, 組織がまとまっていると認知しているほど他者高揚が用いられ, 意見同調が用いられないという結果が得られた。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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