抄録
本研究の目的は, Chaiken (1980) の簡便即断処理および組織的情報処理モデルが想定しているように, 簡便即断処理と組織的情報処理, この2つの過程は同時に生起したり, 影響を与え合ったりするのかを検討することである。加えて, 簡便即断処理の中で, 複数のヒューリスティック手掛かりが態度変容に影響を与えるか否かも検討する。被験者は大学生295名で, 「大学への卒業試験の導入」を説得話題とし, 「関与」「論拠の質」「信憑性」「期待」の変数を操作して, 実験をおこなった。その結果, 精査しようとする動機づけが高い被説得者であっても, 「信憑性」というヒューリスティック手掛かりによって態度得点の相違が認められ, 2つの処理過程が同時に生起していることが示唆された。また, 「信憑性」と「期待」という2つのヒューリスティック手掛かりが, 同時に態度に影響を与えるのではなく, どちらか一方だけが態度に影響を与える可能性が示唆された。