日本食品化学学会誌
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論文
ネオニコチノイド(イミダクロプリド、ジノテフラン)暴露による多世代にわたる C. elegans の慢性暴露影響
坂口 裕子高倉 春奈福永 夏実川添 禎浩内田 雅也冨永 伸明有薗 幸司一川 暢宏
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2022 年 29 巻 2 号 p. 69-76

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抄録

ネオニコチノイドは、ニコチン性アセチルコリン受容体の強力なアゴニストとして、神経系を異常興奮させること により殺虫作用を示す。近年、ヒトを含む哺乳類への影響も懸念されている。本研究では、モデル生物である線虫 C. elegans を用いて、二種のネオニコチノイド、イミダクロプリド(IMI)とジノテフラン(DINO)の慢性暴露影響を評価 した。1、10、100、1000 µM の ニコチン、IMI、DINO の 1% DMSO 溶液を用いた。野生型 C. elegans の L1 ~ L2 幼虫を用いて、バイオアッセイ(成長試験、成熟試験、繁殖試験)を行った。多世代にわたる暴露の影響を評価するため、暴露群第 2 世代、第 3 世代においても同様の検討を行い、濃度間、世代間での影響を評価した。バイオアッセイの結果、1 世代ではいずれの試験においても IMI、DINO とも 10 µM 以上で濃度依存的な悪影響がみられた。多世代試験においては、世代の進行とともに影響が強まり、IMI と DINO とも毒性に累積性があることが確認された。また、この影響は、繁殖試験においてで顕著であり、1 µM 以上の世代間でニコチンと同程度の有意な悪影響がみられた。本研究において、作物の残留基準値内の濃度で生態系生物へ悪影響が起こる可能性を示した。さらには、特に繁殖能力において、ネオニコチノイド慢性暴露による世代を超えた悪影響が示唆された。今後、RNA sequencing や real-time PCR などの遺伝子学的な解析を含めた総合的な毒性評価を行う必要があると考えられた。

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© 2022 日本食品化学学会
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