長野県木曾郡上松町にある赤沢自然休養林内の,ヒノキ単純林分(1林分),アスナロを混交したヒノキ優占林分(2林分),ヒノキと広葉樹を混交したサワラ林分(1林分)の合計4林分においてヒノキ属老齢林の構造と胴体について調査した。林冠木(胸高直径20cm以上)の胸高直径分布はヒノキ林分のヒノキでは50-60cmにモードを持ったのに対して,サワラ林分のサワラはL字型を示した。根上がり状態の林冠木がヒノキで観察された。ヒノキ単純林分の下層は低木性広葉樹で優占されていた。一方,アスナロを混交したヒノキ優占林分の下層はアスナロ下層木で優占されていた。ヒノキ林分ではヒノキ下層木が見られなかった。サワラ林分の下層ではサワラ下層木が優占し,ヒノキ下層木も出現した。1985年から1990年までの5年間で,ヒノキ林分のみで林冠木が枯死し,枯死率は1-3%であったが,サワラ林分では林冠木が枯死しなかった。林冠木の年平均直径生長は0.3-1.2cmの範囲であった。同期間中の下層木の枯死率は8-23%で,その内訳はサワラが11.1%,アスナロが12-21%であったが,ヒノキ下層木は枯死しなかった。