東日本大震災以降,津波防災用の避難丘や盛土道路など人工地盤への植栽が広範囲に実施された。人工地盤の特性は盛土材料や造成方法により多様であるため,その違いを反映した植栽木成長状況の差異が発生することが予想される。本研究では,植栽木の成長に影響を与える主要な地盤特性の影響を明らかにするため,宮城県岩沼市の津波防災用避難丘と盛土道路の法面に植栽された広葉樹を対象に成長状況と植栽基盤特性の関係を検討した。造成および植栽時期の異なる盛土植栽地5箇所を対象に植栽木の成長経過を数年間追跡し,植栽基盤の硬さおよび粒径組成,養分含有量,pHなど盛土材特性との対応関係を比較検討した。植栽地間に見られる成長状況の差異は,植栽地盤の硬さの違いよりも盛土材特性の違いを良く反映しており,粘土含有量,有機物含量,交換性塩基量が少ない酸性ないしアルカリ性に片寄った盛土造成土においてタブ,シラカシ,ウラジロガシ,アラカシ,アカガシ,ヤブツバキ,モチノキなど常緑広葉樹の成長が緩慢になる傾向が認められた。一方,同じ盛土材で造成された同一盛土内に認められる局所的な成長不良は,極端に硬いか膨潤な地盤上で発生する傾向が認められ,植栽地盤の硬度の違いを反映していることが示唆された。