森林立地
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宝川森林理水試験地における土壌孔隙量をもとにした保水容量の推定 : 初沢小試験流域1号沢および2号沢の比較
有光 一登荒木 誠宮川 清小林 繁男加藤 正樹
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1995 年 37 巻 2 号 p. 49-58

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抄録

森林の水源かん養機能を計量評価する一つの方法として,流域土壌の保水容量を土壌深と孔隙率の積で表して計量する手法を用いて,長期にわたって水文データが蓄積されている森林理水試験地内で隣接し,林相・土壌条件の異なる二つの小試験流域における土壌保水容量を算出するとともに,得られた保水容量と両流域の水文データを比較し,土壌保水容量と流域の水流出との関係を検討した。群馬県の利根川源流域にある森林総合研究所宝川森林理水試験地の初沢流域の小試験流域1号沢および2号沢において,土壌断面調査および土壌深調査を行って,両流域の土壌図と土壌深分布図を作成し,それらを重ね合わせて両流域の土壌型・土壌深階級別の分布面積を求めた。さらに,調査した土壌断面の各層位の孔隙解析の結果をもとに,各土壌の土壌深と孔隙率の積を求めて,両流域の流域保水容量を算出した。流域保水容量は1号沢>2号沢であり,この傾向は粗孔隙中の小孔隙をもとに算出した小孔隙保水容量で最も顕著であった。これは,1号沢の土壌深が2号沢に比べ深いこと,小孔隙率が1号沢で大きかったためであった。一方,流量観測値をもとに両試験流域を比較すると保水機能に差があり,1号沢が渇水緩和機能に優れていた。これらのことから,流域の保水機能は土壌の粗孔隙保水容量,特にその内の小孔隙保水容量に依存していることが確認された。さらに,流域全体の保水容量の分布状況を把握し,流域間の比較を行うための保水容量分布図を作成した。

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© 1995 森林立地学会
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