森林立地
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幼齢林の養分動態に及ぼす雑草木と下刈りの影響
高橋 輝昌生原 喜久雄相場 芳憲戸田 浩人福田 誠
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1995 年 37 巻 2 号 p. 67-76

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抄録

雑草木と下刈りが幼齢林の養分循環に及ぼす影響を明らかにする目的で,スギとヒノキの幼齢林において,雑草木量と雑草木中の養分量の変化,下草通過雨の水質,下草通過雨に含まれる養分量と下刈りで林地に供給された有機物の分解を調査した。また,下草通過雨の水質を生態的に安定した壮齢林の林内雨と比較するために,隣接するスギとヒノキの壮齢林(85年生)で調査した。3〜5年生時の雑草木量は3〜5t・ha^<-1>であり,雑草木中の養分含有量は壮齢林での年間の吸収量に相当した。幼齢林では植栽木の養分吸収量が少なく,幼齢林の地上部への養分吸収の多くは雑草木によって行われていた。下草通過雨量は林外雨量の約90%であり,壮齢林の林内雨量の70%よりも多かった。下草通過雨のpH(5〜7)は,林外雨や壮齢林の林内雨のpH(4〜5)よりも高かった。また,落葉期にはN以外の溶存元素濃度が著しく増加した。このように雑草木はスギやヒノキの壮齢林に比べて元素が溶脱しやすかった。下刈りで土壌に供給された粗大有機物は急激に分解され減少した。下刈り後の累積地温と有機物の残存率の関係は指数曲線で近似できた。土壌への養分供給量は下刈りを行った方が,下刈りを行わなかった場合に比べて多かった。しかし,下刈り直後に多量の養分が土壌に供給され,養分吸収量の少ない植栽木には利用されにくいと考えられた。下刈りを行わなかった場合には雑草木から土壌への養分供給は比較的安定していた。

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© 1995 森林立地学会
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