2006 年 48 巻 2 号 p. 85-90
四国の中標高域に残された温帯性針葉樹と常緑カシ類からなる天然林とこれに隣接する29年生のスギ人工林において埋土種子組成を調べた。約3L(20cm×30cm×深さ5cm)の土壌サンプルを天然林で29点(尾根10点,択伐跡のギャップ8点,斜面11点),針葉樹人工林の斜面で36点採取した。土壌サンプルを日なたに置き発芽してくる実生を同定し,埋土種子組成を推定した。その結果,天然林では斜面で22種386個/m^2,尾根で11種158個/m^2,ギャップで8種119個/m^2の埋土種子が検出された。天然林の林冠構成種はミズメを除き埋土種子集団を構成していなかった。一方,スギ人工林の斜面では38種383個/m^2の埋土種子が検出され,天然林よりもスギ人工林で埋土種子の種数が多いことが示唆された。人工林は皆伐などの大きな人為攪乱を受けるため,撹乱依存的な草本種や先駆種の埋土種子が多くなると考えられた。