森林立地
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外来樹木ニセアカシア河畔林への在来木本種の定着 : エノキとヌルデを例に
黒河内 寛之
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2012 年 54 巻 2 号 p. 101-106

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抄録
侵略的外来樹木ニセアカシアの優占する群落内に,他樹種がいつ定着し,どのように成長するのかについての知見を得るために,長野県千曲川中流域の大規模なニセアカシア林内にて,ニセアカシア以外の木本植物の定着有無および定着過程を調査した。3カ所のニセアカシア河畔林内(計3,600m^2)を調査したところ,ニセアカシアは728個体確認され,ニセアカシア以外に6科6属6種265個体の木本植物が確認された。特に,エノキは19個体,ヌルデは229個体と比較的多くの個体が定着していて,この2種について定着過程を解析した。先ず,エノキの樹高成長を年単位で調べたところ,樹高1mになるのに2〜3年必要で,これは周囲のニセアカシアと同程度であった。さらに,樹齢分布を調べたところ,エノキとその周囲のニセアカシアとの樹齢階級は同程度であった。これらから,初期成長が早いエノキは,ニセアカシアが倒木や伐採などの撹乱を受けた際にニセアカシア林内へ定着できたと推測される。一方,ヌルデの水平根の追跡から3つのジェネットが確認され,大部分のヌルデはいずれかのジェネットからのラメットであった。また,樹長成長解析から,ニセアカシア林内のヌルデは樹長1mになるのに3〜6年必要で,成長が悪かった。さらに,樹齢解析からニセアカシア林内のヌルデは若い個体が多かった。これらから,ヌルデは,ニセアカシア林冠下で成長は悪いが,水平根由来の栄養繁殖能によりニセアカシア林内での個体数維持を可能にしたと推測される。
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© 2012 森林立地学会
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